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さらに水平道を行く2 [黒部川釣行記]

「東谷」入渓を断念

さて、行く手を遮る懸案の2連8mの滝を越さなければならない。
魚止めのこの滝を、越えられれば東谷の核心部に入渓して曽根
原氏が言った東谷のイワナを確かめられるのである。

滝は東谷と黒部本流との出合から200mぐらいの位置にあった。
ちょっと見たところでは適当な登り口が見つからない。急な絶壁を
樹に掴まってよじ登るしか手立ては無さそうだ。

「よし!右から登ろう、あの張り出した太い樹の枝に手が届けばな
んとかなりそうだ、行こう!」二人ならば力を合わせて滝上に登れ
るのではないかと内心期待して彼を促し同意を求めた。

これは、今までに同行した他の渓流での彼の経験や動きなどから
判断しても普通の成り行きであり、気軽な相棒への誘い、いつもの
極めて当たり前のやりとりであった。

一般的に二人で入渓した場合、ある一定の間隔を置き、前後して
大小の岩を乗り越え、大概は終始無言で前方の好ポイントを目指
しながら釣って行く。時には落差のある滝などにぶつかっても、お
互いにうまく登り口を見つけては遡行を繰り返す。

この約8mの滝の登り口は両岸切り立った絶壁で落差はそれ程で
もないが越えにくい。だが、普段の釣り方の行動としては、あらた
まって躊躇する程のものではなかった。まして、今回は二人である。

黒部7.3 004.jpg
最初の難関2連8m滝の手前

右側のハングの大壁の脇の樹が張り出している
部分に取り付いて、大壁沿いに登れば、、、。

だが、なんと驚いたことに、「ここまでにしよう---。」という彼の思い
がけない返事だったのである。私は一瞬耳を疑った。眼前の光景
に恐れをなしたのか、自分の目的遂行のみで同行者の目的はど
うでも良かったのか。

後で考えると彼は、最初から東谷のイワナなどどうでも良かったら
しい。ここで引き下がるのなら、なにも協力者は必要ない。単独で
も出来そうに思った。

私がザイルを用意し、航空写真まで手に入れて用意周到準備し
ていて、当初からの「東谷を目指しての執着や経緯」を充分に知っ
ていたはずなのにである。

もっとも、彼と二人だけの釣行は今回が初めてだが、諸事万端を
整えて準備怠り無く支障のないように計画して実行する事は、何
でもないようだが責任もあって結構大変なのである。適当に、ただ
追従するだけなら結果の如何に関わらず比較的楽なものなのだ。

私は「この場でゴチャゴチャ言ったところで仕方ない」と思った。
その気のない者を無理に誘う訳にもいかない。初めての場所でも
あるし、どんなアクシデントがあるかも知れない。

渓流釣りでは今まで、いろいろな危険な事に遭遇している。危な
いと感じたら引きさがるのが常道でもある。「では、仕方が無いか
らそうするか。」ということになってしまった。

まだ、確か9時頃だったと思うが、彼は黒部本流を渡り返して、水
平道を黒部ダム方向に2時間位「上流の十字峡を観たい」と言い
出した。私は、このまま阿曽原温泉まで戻って一泊し、元の道を
帰るだけでは物足りないとも思った。

私は、あまり乗り気ではなかったが、時間もあるし「十字峡」まで
行くことにした。目的が「東谷のイワナ」だったから、テントその他
は阿曽原温泉に置いてきていたので釣具とザイルと登攀用具だ
けの軽装だし、手前のS字峡も実物を観た事は無かった。

「東谷のイワナは、後日、やはり自分一人で確かめれば良い、
場所は確認出来たし入渓する要領はなんとか得た。」

何でも乗りかかると人一倍物事に集中して執着するくせに、あき
らめるのも早い。良い方に解釈して、「切り替える特技?を持って
いる。」と認めてもらえれば御の字である。

時間的に十字峡まで大分掛かるし、また、あの黒部川本流を渡
らなければならない。それではと出合まで急いだ。

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