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「十字峡」から戻る [黒部川釣行記]

「阿曽原温泉に到着」


新しくホームページを作りました。タイトルは「沢の釣り歩き専門」です。

このブログ「渓流の釣り」は、別のホームページの方に移行しました。
新旧逆順のブログと違って、順番に見られます。

アドレスは下記です。
http://keiryuuzuri.com/





 東谷から十字峡までの水平道は、予想よりアップダウンが小さくて
比較的に楽だった。東谷出合の吊橋からS字峡を経て十字峡までの
時間は、途中で早飯を食べた休憩時間を加えても大体2時間、予定
通りである。

有名な「十字峡」に到着して記念に写真を撮った。当方は釣りが目的
だが、この十字峡を見学?するためだけに歩いて訪れる人は多分居
ないのではないだろうか。

十字峡.jpg
               十字峡

同じ十字峡という名の場所は全国に何ヶ所かあるようだが、
川が十字に合流しているので、その名が付いたらしい。
以前、新潟の六日町の北でも見た事がある。それは、単に
沢が十字に合流している形だけのものだった。「何々銀座」
という商店街が全国に散らばっているようなものだ。
この十字峡は水量も多く赤い花崗岩の渓流で景観に迫力
を感じた。

登山の道すがらや阿曽原温泉宿泊の途中に通過する人のみが実物
を観ることが可能な気がする。黒四ダムから下っても、欅平から上って
も、ここは安易な物見遊山で行ける場所にはない。

 「十字峡」は黒部川本谷に左岸から剣岳からの「剣沢」と右岸から
先程の東谷の一つ上流に位置する「棒小屋沢」が文字通り十字に流
れ込む場所になっていた。黒部下ノ廊下の核心部とも言えそうだ。

十字峡の見える辺りは水平道も少し広くなっていた。ここでキャンプ
をするらしく焚き火の跡もあり、水場は近いので登山者の格好のテ
ン場のようだ。剣沢の激流を二人で見ながら暫く休憩した。

これから暗くならない内に阿曽原温泉まで戻らなければならない。
昼間でも危険な水平道を暗くなっては歩けないし、明日の帰路の準
備もある。早々に引き上げることにした。

道々歩きながら考えた。今日、阿曽原温泉でテント泊して明日の早
朝に出発し、往路の水平道を辿って「欅平」まで戻らなければなら
ない。

「欅平」の駐車場に着いて車に乗り込むまでは安心できない。狭い
水平道を、油断しないで帰路を無事に完了したいと思った。

途中の仙人ダムの吊橋を渡り、阿曽原温泉には夕方の明るいうちに
着いた。「十字峡」から約4時間位は掛かったと思う。早速、露天
風呂に入り汗を流した。

用意の飯を炊いて、小さな缶詰とカレーを温めた副食。それと彼が
釣った一尾のイワナのムニエルが色を添えた。こういう時は何でも
美味しいが、釣ったばかりの天然のイワナは格別だった。














さらに水平道を行く3 [黒部川釣行記]

「十字峡」を目指す

本流の水かさは増していた。黒四ダムの放流の後のようだ。来た時
よりも水深があり流れも強い。泳いで渡る位置から100m位下流
の滝は1m程の落差になっているようだ。その下は白泡を吹く深み
で、あの滝まで流されたらお終いである。

今度は彼が先に飛び込んだ。水泳には相当自信があるらしい。やは
り平泳ぎだった。見ていると、飛び込んだ位置から自分より大柄な
彼が凄い速さで流されてゆく。斜めに30m位は流されていた。マ
スター級の彼も必死だったようだ。

さあー、今度は自分の番だ、どうしても渡らなければならない。す
ると、彼が対岸の中洲から何か叫んでいる。「ザイルを投げろ、泳
いでいるところへ投げるから」と言っている。

私の泳ぎに不安を感じたらしい。マスター級が不安を感じるのだか
ら、彼も相当ビビッたようだ。対岸にいる彼目掛けて、ザックから
出したザイルを思い切り放り投げた。

「ザブーン!」先程の彼が斜めに流されたの見て、なるべく直角に
短い距離で向う側に到達するつもりでクロールで夢中になって泳い
だ。20mは流されたが、なんとか対岸にたどり着いた。途中、彼
が投げたザイルが水中で見えたが、とても掴む余裕はなかった。
やれやれ---である。

危険水平道.jpg
水平道をしばらく歩くと、こんな危険なところもある。
遠方に見えるのは関電の換気口。向こう側から写
真の左の奥へ削れた道があり、回り込んで手前へ
と歩く。

しばらく休憩をして、足早に水平道まで登り「十字峡」を目指して
歩き出した。山側の右手は切り立った断崖絶壁で左の下方は、やは
り200mの谷である。道幅は崩れて部分的に1mも無い危険な箇
所もあり、ザックが右側の突き出ている岩に当れば反動で谷側に飛
ばされてしまいそうな感じだ。

ゆっくりと慎重に通過してS字峡らしき所まできた。S字峡は、黒
部川が文字通りローマ字のSの字のように流れている所といわれて
いる。

道の端に確か「S字峡」と書いた小さな標識が有ったように記憶し
ているが注意していないと通り過ぎてしまうかもしれない。よく見
えなかった。そのためか、S字峡はあまり印象に残っていない。




さらに水平道を行く2 [黒部川釣行記]

「東谷」入渓を断念

さて、行く手を遮る懸案の2連8mの滝を越さなければならない。
魚止めのこの滝を、越えられれば東谷の核心部に入渓して曽根
原氏が言った東谷のイワナを確かめられるのである。

滝は東谷と黒部本流との出合から200mぐらいの位置にあった。
ちょっと見たところでは適当な登り口が見つからない。急な絶壁を
樹に掴まってよじ登るしか手立ては無さそうだ。

「よし!右から登ろう、あの張り出した太い樹の枝に手が届けばな
んとかなりそうだ、行こう!」二人ならば力を合わせて滝上に登れ
るのではないかと内心期待して彼を促し同意を求めた。

これは、今までに同行した他の渓流での彼の経験や動きなどから
判断しても普通の成り行きであり、気軽な相棒への誘い、いつもの
極めて当たり前のやりとりであった。

一般的に二人で入渓した場合、ある一定の間隔を置き、前後して
大小の岩を乗り越え、大概は終始無言で前方の好ポイントを目指
しながら釣って行く。時には落差のある滝などにぶつかっても、お
互いにうまく登り口を見つけては遡行を繰り返す。

この約8mの滝の登り口は両岸切り立った絶壁で落差はそれ程で
もないが越えにくい。だが、普段の釣り方の行動としては、あらた
まって躊躇する程のものではなかった。まして、今回は二人である。

黒部7.3 004.jpg
最初の難関2連8m滝の手前

右側のハングの大壁の脇の樹が張り出している
部分に取り付いて、大壁沿いに登れば、、、。

だが、なんと驚いたことに、「ここまでにしよう---。」という彼の思い
がけない返事だったのである。私は一瞬耳を疑った。眼前の光景
に恐れをなしたのか、自分の目的遂行のみで同行者の目的はど
うでも良かったのか。

後で考えると彼は、最初から東谷のイワナなどどうでも良かったら
しい。ここで引き下がるのなら、なにも協力者は必要ない。単独で
も出来そうに思った。

私がザイルを用意し、航空写真まで手に入れて用意周到準備し
ていて、当初からの「東谷を目指しての執着や経緯」を充分に知っ
ていたはずなのにである。

もっとも、彼と二人だけの釣行は今回が初めてだが、諸事万端を
整えて準備怠り無く支障のないように計画して実行する事は、何
でもないようだが責任もあって結構大変なのである。適当に、ただ
追従するだけなら結果の如何に関わらず比較的楽なものなのだ。

私は「この場でゴチャゴチャ言ったところで仕方ない」と思った。
その気のない者を無理に誘う訳にもいかない。初めての場所でも
あるし、どんなアクシデントがあるかも知れない。

渓流釣りでは今まで、いろいろな危険な事に遭遇している。危な
いと感じたら引きさがるのが常道でもある。「では、仕方が無いか
らそうするか。」ということになってしまった。

まだ、確か9時頃だったと思うが、彼は黒部本流を渡り返して、水
平道を黒部ダム方向に2時間位「上流の十字峡を観たい」と言い
出した。私は、このまま阿曽原温泉まで戻って一泊し、元の道を
帰るだけでは物足りないとも思った。

私は、あまり乗り気ではなかったが、時間もあるし「十字峡」まで
行くことにした。目的が「東谷のイワナ」だったから、テントその他
は阿曽原温泉に置いてきていたので釣具とザイルと登攀用具だ
けの軽装だし、手前のS字峡も実物を観た事は無かった。

「東谷のイワナは、後日、やはり自分一人で確かめれば良い、
場所は確認出来たし入渓する要領はなんとか得た。」

何でも乗りかかると人一倍物事に集中して執着するくせに、あき
らめるのも早い。良い方に解釈して、「切り替える特技?を持って
いる。」と認めてもらえれば御の字である。

時間的に十字峡まで大分掛かるし、また、あの黒部川本流を渡
らなければならない。それではと出合まで急いだ。

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さらに水平道を行く1 [黒部川釣行記]

「東谷出合」に到着

涸れ沢の急なゴーロを用心しながら降りた。目の前の黒部川本流は
川幅100m位だった。「東谷」の出合だ。

本流の流れは想像していた程の急流に見えない。簡単に渡れそうだ
った。放水前だからか、「あれなら泳がないでも渡れるかも知れな
い」と思った。

川原に降りて一休みである。対岸の崖上に関電のアーチ形の排気口
が見える。その奥にトンネルが有って欅平まで通じているらしい。

「さて、それでは、いよいよ渡るか、、。」

早速2人は渡渉を開始した。流れは緩く、腰下で渡れる。斜め上流
に向かって間合いを計り、流れにやや逆らうように、方向は「東谷」
の出合左岸が目標。慎重にズリ脚で渡る。

流心を越えて川幅約4分の3位進んだ。その辺りは分流した中洲に
なっていて、その先4分の1は、どう見ても深い。近づくと淀んで
いて深いところは背丈以上は有りそうだった。

重い流れでしかも速い。身体を流れに持って行かれそうな感じだ。
とても歩いては渡れそうにない。その幅は10m位だろうか。

時間的に上流の黒四ダムの放水の前で、放水されて下流のこの辺り
まで増水すればもっと深みの幅は増すはづである。

歩いて渡るなどとんでもない。近づいてみないと判らないものであ
る。川幅が狭ければ移動して、上、下流の浅い渡れそうな場所を見
つけられるのだが、浅瀬は流れが激しく深みが続いている。

予想通り泳ぐ羽目になった。泳がないで渡渉できれば良いのだが、
万が一滑って流されては危ない。「よし!泳ぐか」

さっそく、上着をザックに入れて水濡れしても直ぐ乾く上下のシャ
ツ姿になって泳ぐ準備を始めた。

東谷と黒部川本流との出合.jpg
東谷と黒部川本流との出合

下側の流れが黒部川本流の一部、上部の沢が目指す
東谷である。

「バシャーン!」私が先に飛び込んだ。川を歩いて渉る時はズリ足
で水勢に逆らうように斜め上方に向かって渡渉するのが普通だが、
この時は、逆に上流から流されるように斜め下流を目指した。
全身で流れに抵抗するのだから水勢を利用して短時間勝負だと考
えたのである。

多分水温15℃位だと思うが冷たさは感じなかった。むしろ、真夏に
汗だくで歩いて来たせいか気持ちが良い。

抜き手を切って颯爽と、とはいかないが平泳ぎで懸命に泳いだ。対
岸に着いて、今度は彼の番だ。やはり平泳ぎ、さすが自称マスター
級、大型の少し太めのカエルは難なく到着した。

改めて言うのも変だが、トノサマ蛙、イボ蛙、ウシ蛙、アオ蛙、ガ
マ蛙、ヒキ蛙、アカ蛙、アマ蛙など蛙の種類は沢山あるけれども、
皆泳ぎがうまい。

泳ぎを見ていると速くて無駄がなくて格好いい。足首の関節が柔ら
かく足の平が柔軟に返るから、水を無駄なく後方へ蹴ることができ
るようだ。また、足は大きいほど推進力が有って良いらしい。

足首が硬く水をたくさん蹴れない私は、カエルを羨ましく思った。

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先ず手始めに「東谷」の出合付近を釣ることにした。私は第1投、
茶色の毛バリを大石の下の流れに放り込んだ。すかさずグーッと
竿先を絞り込んで穂先が止まった。逆光で良く見えなかったが、
エサ釣りのような、水面下の重い手応えである。

内心、これは大物だと思った。竿先を弛めないように慎重にスタン
スを確かめ、大イワナ?を引き寄せようとしたが動かない。糸を張
って強引に引く、掛かりが浅かったのか外れてしまった。確かに魚
の手応えである。

彼はと見ると、黒い毛バリを上手に振り込んでいた。するとすかさ
ず、1尾の太った結構いい形の9寸位の岩魚を掛けていた。

まず、「東谷」出合に岩魚がいることが判かり、それから前方の滝
までの間、二人で黙々と釣ったが、彼が釣った岩魚だけであとは釣
れなかった。



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「欅平」から日電歩道を行く8 [黒部川釣行記]

早朝、彼と私は「東谷」目指して阿曽原温泉を勇んで出発した。

私のザックには、ハーケン、ボルト、シュリンゲ、ハーネス、補助
ザイル数本などの簡易な「登攀用具一式」も詰め込んでいた。

不要な物をテントに置いて、なるべく軽装で行く方が良かったが、
本来あたためていた”熱い思いの”目的達成のためには、どうし
ても「登攀用具一式」は離せなかった。ただ単に「東谷」の出合
まで行くだけでは何の意味もなくなってしまうからだ。

あれもこれも必要などと沢山ザックに詰め込むと重くなってしまう。

彼は口には出さなかったが、私を見て「なんでヨタヨタ歩いている
のか」と思っただろう。

吊橋5.jpg
仙人ダムの上流にある吊橋。黒部川の上
流から写したものである。下流のはるか彼
方に阿曽原温泉が有って、そこから仙人ダ
ムを経て吊橋の写真右手、黒部川本流の
右岸から吊橋を渡って左岸から川原に降
りたのである。その対岸に東谷が流れ込
んでいる。


仙人ダムまでを1時間と考えていた。仙人ダムの上流部に高さ
30m位の大きな吊橋があった。

前述の、沢登りの記録によると「東谷」へは黒部川を渡渉しない
で右岸に道があって、吊橋の辺りから入渓できそうに記載され
ていたが、それらしき道は見当たらない。

泳いで渡渉する準備をしておいて良かったのだ。

巻き道は多分廃道になってしまったか、もしくは、元々道ではな
くて迫り出した山の崖を高巻く意味だったようである。

沢登りの連中には極自然に「道」でも、初めての者にとっては判
かりづらく、それは「道」では無いのかも知れない。

樹々で見通しの効かない場所をよじ登って、ヘヅリ、を繰り返し
道に迷っていたのでは余計な時間浪費になってしまう。

私達は予定通り釣り橋を渡って黒部川左岸から渡渉で「東谷」
に入渓することにした。此処まで約1時間半位かかった。


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「欅平」から日電歩道を行く7 [黒部川釣行記]

kebariline3.jpg
これも、毛バリと一緒にもらったテンカラのラインである。
馬素を縒ったもので、軽く、竿を振ると絶妙な感じで翔ぶ。
フワリと狙ったポイントに着水する。
長年、職漁師として生活していたプロの技術が結集した
優れものである。やはり、人から教わったり、真似事では
シンプルで有効な道具は得られない。

暫く歩き、水平道から少し谷側に道が広くせり出した所から、黒
部川右岸に餓鬼谷の稜線の谷間が見えた。そしてまた暫く歩き、
やっと、目的の阿曽原温泉の位置を確認できる場所までたどり
着いた。

左右の垂直面は山襞でくねくねした道だから目標の阿曽原温泉
も見え隠れする。「もう少しだ、、、。」という思いがした。小屋に着
けば温泉にも入れるし祝杯も揚げられる。

何の祝杯でも良いのだ。重い荷を背負って、汗だくになり、ヨタヨタ
しながら辿り着くのだから「無事到着祝い」かな。

明日はどうするか、あの滝は越せるか、天気はどうか、そんな事
を想像したからだろう、気のせいか一時的に楽になったのを覚え
ている。

小屋が間近に見えた。もう着いたようなものである。阿曽原温泉
の直ぐ下の沢でラストの休憩を摂ることにした。軽量の登山靴を
脱いで冷たい沢水に足を入れると今までの疲れが少し癒された。

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「阿曽原温泉」は黒部川左岸の高台に有った。黒部川は欅平か
ら蛇行しながら此処まで続き、さらに上流の十字峡・黒四ダムを
経て源流部に至っている。

ダムまでは水平道と共におおよそ平行して流れている。「阿曽原
温泉」の所は低くなっていて山荘は黒部川の岸の崖の上の眺め
の良いところにあった。

約6時間で予定通りだった。山荘の空き地にテントを張る。飲み
物は重いからポケット瓶のウイスキーを持参していたが、元来は
二人とも日本酒である。

取り合えず、山荘の売店に行きビールを買って乾杯することにした。
真夏に汗まみれで、やっとたどり着き、明日の楽しみを心に秘めて
の祝杯。これぞまさに至福の時である。---「乾杯!」

それから、飯を炊いてそそくさと食事を済ませる。山の夕暮れは
はやい。見上げる漆黒の夜空は満天の星だった。少し下った所
に露天風呂があり懐中電灯で急坂を降りてみると、コンクリート
で造られた長方形の大きな浴槽があった。

他に客は無く二人で貸し切り、ウイスキーを飲みながらドップリと
湯に浸かる。疲れでトロンと眠くなるが、明日の期待で話がはず
んだ。

間近に黒部川の瀬音を聞きながらの入湯は最高で、また、良い
湯加減だった。





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